【一般社団法人】平成30年の税制改正を踏まえた相続対策の必要性あり!
カテゴリ:相続税
/公開日:2018年4月2日
相続税を課税されずに済むため今まで家族の間で財産のやり取りに利用されてきた「一般社団法人」。それが今後、税金を大幅に取られる恐れがあります。
税制改正は毎年あります。平成30年の改正では、一般社団法人から相続税や贈与税を徴収しやすくなる内容に変わってしまうことが確定しています。
今後、一般社団法人を利用して節税を考えている場合は、なるべく早めに対策を講じる必要があります。
それでは、今回の税制改正でどのように変わったのかご説明していきます。
一般社団法人等がこれまで節税に利用されてきた背景とは
一般社団法人は、公益社団法人と異なり誰でも登記・設立が可能です。
1.一般社団法人を設立するときの主なメリット
・社員は最低2名いれば設立できる。
・費用が安くて済む(登記手数料が6万円くらいかかる程度です)。
・事業目的に制限がない。
・以前の公益法人と異なり、主務官庁のチェックを受けなくてもよい。
等々。
このように簡単につくれるため、平成20年にこの制度がスタートしてから、あちこちで新設されてきました。
2.一般社団法人と株式会社の違いとは
一般社団法人は、株式会社のような営利活動をすることもできます。
しかし一般社団法人は、株式会社と異なり収益が生じてもそれを株主に分配することはありません。
また、「非営利型法人」と認定されれば、収益がたくさんあったときでも法人税や贈与税を課税されずに済むため、株式会社よりも節税をしやすいという利点を持っています。
3.一般社団法人の役員(理事)のシステムとは
一般社団法人は、理事に対する制限が設けられていません。家族だけで役員のポストを独占してもOKです。ちなみに理事になったら、給料を受け取ることもできます。
家族だけで主要なポストを独占してから、個人的な財産を法人内に移した場合、その財産は理事の間で自由にやり取りできます。
以前はこの仕組みを活用すれば、相続税や贈与税をまったく納付せずに財産の譲渡を行ったり、事業承継を行ったりすることができました。
このように、一般社団法人は相続税・贈与税を免れるために利用されていたので、平成30年から法令を改めて納税を回避できないようにする方針が固まりました。
平成30年4月から「特定一般社団法人等」とみなされると相続税が課税されます
平成30年の4月1日から施行される法改正の内容はすでに公開されています。
誰でも簡単に目を通すことができますが、その内容は税法に詳しくなければなかなか理解しにくいです。
改正内容の要点
特定一般社団法人等に該当すると判断されると、特定一般社団法人等の理事が亡くなった時には、その特定一般社団法人等がその亡くなった理事から遺贈という形で一定額を取得したとみなして、その特定一般社団法人等に対して相続税が課税されます。
遺贈により取得した金額(相続税を課税される金額)は、以下の計算式で求めます。
「法人の中に残されている純資産額」÷「同族役員の人数(被相続人も含めて数える)」
※同族役員が少ないと相続税の対象額は増えてしまうことになります。
※用語解説「特定一般社団法人等」
特定一般社団法人とは次のどちらかに該当する法人を指します。
1.相続開始直前の時点で、「同族役員」が全役員の二分の一を超えている場合
2.相続開始前の5年間で、「同族役員」が全役員の二分の一を超えている状態が3年以上の場合
※用語解説「同族役員」
「同族役員」とは、以下の条件に当てはまる理事を指します。
・被相続人(死亡した本人)
・被相続人の配偶者(夫or妻)
・被相続人の3親等以内の親族(親・子・祖父母・孫・兄弟姉妹・曽祖父母・曾孫・おじ・おば・甥・姪)
・被相続人と、特別な関係を持つ者(たとえば被相続人が役員を務める企業の従業員等)
改正された税法が、すぐに適用されないケースとは!?
この改正税制が施行されるのは、平成30年の4月1日からです。
しかし、実際に世の中に多数存在する一般社団法人に、ただちに適用されるわけではありません。
この法改正については、以下のような注釈が付けられているのです。
2 一般社団法人等に関する相続税・贈与税の見直し
1)一般社団法人等に対して贈与等があった場合の贈与税等の課税の見直し 個人から一般社団法人又は一般財団法人(公益社団法人等、非営利型法人その他一定の法人を除く。以下「一般社団法人等」という。)に対して財産の贈 与等があった場合の贈与税等の課税については、贈与税等の負担が不当に減少 する結果とならないものとされる現行の要件(役員等に占める親族等の割合が3分の1以下である旨の定款の定めがあること等)のうちいずれかを満たさない場合に贈与税等が課税されることとし、規定を明確化する。
(注)上記の改正は、平成 30 年4月1日以後に贈与又は遺贈により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用する。(2)特定の一般社団法人等に対する相続税の課税 ① 特定一般社団法人等の役員(理事に限る。以下同じ。)である者(相続開始前5年以内のいずれかの時において特定一般社団法人等の役員であった者を含む。)が死亡した場合には、当該特定一般社団法人等が、当該特定一般 社団法人等の純資産額をその死亡の時における同族役員(被相続人を含む。)の数で除して計算した金額に相当する金額を当該被相続人から遺贈により取得したものとみなして、当該特定一般社団法人等に相続税を課税することとする。
② ①により特定一般社団法人等に相続税が課税される場合には、その相続税の額から、贈与等により取得した財産について既に当該特定一般社団法人等に課税された贈与税等の額を控除する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記の「特定一般社団法人等」とは、次に掲げる要件のいずれかを満たす一般社団法人等をいう。
① 相続開始の直前における同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超えること。
② 相続開始前5年以内において、同族役員数の総役員数に占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。(注2)上記の「同族役員」とは、一般社団法人等の理事のうち、被相続人、その配偶者又は3親等内の親族その他当該被相続人と特殊の関係がある者(被相続人が会社役員となっている会社の従業員等)をいう。
(注3)上記の改正は、平成 30 年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用する。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成 33 年4月1日以後の当該一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用し、平成 30 年3月 31 日以前の期間は上記(注1)②の2分の1を超える期間に該当しないものとする。
引用元:平成30年度税制改正の大綱
この黄色マーカーの箇所をわかりやすく言い換えますと、すぐに相続税を課税されるのはこれから設立される法人だけといえます。
すでに存在する法人の場合は、平成33年の4月1日まで丸々3年間は適用されません。
これからできる対策としては、簡単に言えば、上記の規定に当てはまらないようにすればよいということになります。
対応策
・同族役員の割合を減らし、1/2以下にする
・同族役員が減らせない場合は、反対に増やす(これにより遺贈により取得したとみなされる金額が減ります)
・高齢な理事を退任させ、若い理事に入れ替える(死亡リスクを減らす。とはいえ、理事を退任しても5年以内にその方が亡くなった場合には遺贈により取得したものとみなされる金額が発生する。)
このように、税制改正により今までの規定と比べると厳しくはなりましたが、まだまだ対策は取れそうです。
平成30年4月から贈与税を課税される可能性も拡大されます
このたびの税制改正で見直されたのは相続税だけではありません。
贈与税に関しても、節税が難しくなります。
実はこれまでも、一般社団法人等に対する贈与税の規定はありました。
何らかの資産の贈与を受けたときは、以下の要件に該当する場合は贈与税が課税されることになっていました。
1.「役員等に占める親族等の割合が、三分の一以下である」という趣旨の定めが、定款に記載されていること
2.その法人に財産の贈与or遺贈をした者、またはその者の親族等に対して、特別の利益を与えないこと
3.その定款等の中で、「その法人が解散した場合、その残余財産は国等に帰属する」という趣旨の定めが記載されていること
4.その法人に、仮装・隠蔽の事実がないこと
これまでこの4つの基準は、どのように用いられるのか不透明だったのですが、今回の税制改正で、4つの基準のいずれか1つでも満たしていないなら贈与税が課税されることに変わりました。
※この規定は、平成30年1月1日以後の取得した財産に対し相続税や贈与税の適用を受けることになります。
相続税のケースと異なり、贈与税に限っては早急に対策を検討する必要があります。
まとめ:一般社団法人の節税方法には、大幅な見直しが必要!
一般社団法人を設立して、その中で家族同士の財産を無税でやり取りすることは今後簡単にはできなくなります。
まとめポイント
・一般社団法人は、設立がとても簡単。理事の任命も簡単で、一族ばかりで役員職を楽に独占できてしまう。
・相続税対策によく利用されてきたが、平成30年の法改正によってそれが難しくなった。
・同族役員の割合が高いと相続税を課税されるが、同族役員を減らすと相続税の対象額は増えてしまう。
・相続税の法改正は、すでに存在する一般社団法人等については、平成33年4月1日まで適用されない。
・贈与税に関しては、これまでに存在した4つの要件をすべて満たさない場合は今後課税される。
相続税については3年ほど猶予がありますが、贈与税についてはそうはいきません。
どちらにしても、「どのような方法を用いるとベストの節税ができるのか?」という事を頭の片隅においておく必要があります。
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