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融資交渉に失敗は許されない?日本政策金融公庫の創業融資を例に解説

カテゴリ:税理士コラム

/公開日:2018年3月17日

会計
融資を引き出すことについて興味のある起業家・経営者は多いでしょう。この記事では日本政策金融公庫の創業融資を例に次の内容を説明します。
(1) 融資の引き出しに失敗が許されない理由
(2) 起業家・経営者と金融機関の考え方のギャップ
(3) 融資を引き出すための金融機関と交渉するポイント
特に(2)を知らずに金融機関と交渉しても、起業家・経営者のアピールが的外れに陥る可能性があります。そのため、相手(金融機関)が求めている情報を知り、融資の引き出しに成功に大きく前進する交渉術を解説します。

そもそもなぜ融資の引き出しに失敗が許されないのか

金融機関に融資を申し込む動機を考えれば、失敗が許されない理由が見えてきます。具体的な動機の例を2つ挙げましょう。
(1)ビジネスチャンスを逃さないため
起業・経営は物件の賃借費用など先行投資をするのが普通です。その資金を調達するために金融機関からの融資が必要となります。たとえば、新規店舗をオープンすることで年間2,000万円の利益が獲得できる見込みがあるとします。しかし、融資を受けられず、資金を新規店舗のオープンに必要な初期費用に投入できなければ、利益を得られるチャンスを逃してしまいます。

(2)資金繰りを良くするため
利益は売上高に対する採算のことを指しますが、現金収支(キャッシュフロー)残高は利益と一致するとは限りません。たとえば、ホームページ制作会社が大口の得意先から納品月の2カ月後に入金する予定とします。しかし、家賃など経費の支払いまで2カ月まで先延ばしできません。そのため、得意先から入金されるまでの間、一時的に不足するキャッシュフローを埋め合わせするために融資を受けることが必要となってきます。

要するに会社を維持し、発展するためには、融資の引き出しに失敗は許されないのです。

起業家・経営者と金融機関の考え方のギャップを埋めるのが融資交渉である

融資を申し込む起業家・経営者と金融機関とでは根本的に考え方が違います。まずは両者の考え方を見ていきましょう。
(1)起業家・経営者
融資を申し込む以上、起業家・経営者は自分のビジネスプランに自信があります。調達した資金を投入して獲得した利益で借入金の返済ができると考えるのは当然でしょう。

(2)金融機関
起業家・経営者の自信とは裏腹に金融機関は「この会社は貸したお金を返してくれるのか」と保守的に考えます。本当に利益を獲得できるどうかは不明であり、そもそも融資先の業界や同業他社との優位性を知る由がありません。

特に創業融資は起業家・経営者にビジネスプランの自信はあっても実績がないため、金融機関(日本政策金融公庫)の考え方のギャップが顕著に表れます。だからこそ、融資交渉では根拠のある数字を具体的に示しながら、借入金を返済できることを日本政策金融公庫にアピールする必要があります。

融資交渉のマナーと具体的な数字を示す6つのポイント

融資を引き出すためには、単に「借入金を返済できる」と言うよりも、「月商はいくらで、どのぐらいの利益を獲得できるか」といった具体的な数字とその根拠をセットに日本政策金融公庫へアピールしたほうが効果的なのは言うまではないでしょう。そこで、融資交渉のポイントを解説します。

(1)融資交渉のマナー
利益を獲得できることを裏づけるためには、創業動機を伝えるとき「サラリーマンに限界を感じたから起業をする」「不景気だから貸してほしい」などネガティブな言葉は厳禁です。それでは単なる言い訳と捉えられます。日本政策金融公庫には「ビジネスプランの内容に顧客のニーズを満たす」などポジティブな動機を伝えるのが最低限のマナーです。

(2)創業する事業の経験値と再現性を年数でアピールする
日本政策金融公庫は創業する事業について経験値があるほうが成功する可能性が高いと考えます。たとえば、飲食店を開業するとします。そのとき、A料理店で5年、B中華料理店で7年など具体的な経験年数を伝えましょう。また、勤務時代の経験値が起業後に再現できることを裏づけるために「5年間店長をした」などマネージャー経験をアピールすることは有効です。

(3)自己資金の金額を説明する
自己資金とは、事業に投入できる自分のお金のことを指します。要するに貯金額です。事業が起動に乗るかどうかの不明な以上、初期費用を賄うのに借入金に頼りきりで、返済額をできるだけ増やしたくないのが普通です。日本政策金融公庫は起業家のやる気の尺度として自己資金の金額を重視します。

たとえば、360万円の自己資金があるとします。そのとき、初期費用が700万円かかるので、自己資金360万円の差額340万円の資金が必要であるなど、融資希望額の根拠を示すのが鉄則です。さらに計画性をアピールするため、360万円を月10万円ずつ3年間(36カ月間)貯金したなど、自己資金の蓄え方について説明することが大切です。

(4)利益が確保できることを具体的な金額でアピールする
そもそも売上高から売上原価(仕入高)と経費を差し引いたのが利益であり、借入金の返済能力を裏づける金額となります。そこで、売上高・原価・経費について数字を用いてアピールする方法を解説します。
① 売上高
販売数量に販売単価を掛けたのが売上高です。得意先や顧客の動向に左右され、起業家・経営者の思惑だけではコントロールできません。そのため、日本政策金融公庫に売上高の根拠を2つの切り口から説明することが大切となっています。
イ、稼働能力
たとえば、美容室を開業するとします。店舗経営の場合、稼働能力から求めた売上高は「客単価✕客数✕回転数」となります。なお、サービス業など業種によって計算式は異なるため、自社の実情に合った方法で算出する必要があります。
ロ、同業他社との競争力
たとえ稼働能力があっても得意先や顧客を確保しなければ、販売することはできません。そのため、同業他社よりも優れているセールスポイントをアピールする必要があります。たとえば、「過去にトップセールスで社長賞を受賞した」など客観的な実績に基づく営業力や技術力が優れていることを日本政策金融公庫に伝え、説得することが大切です。

② 売上原価(仕入高)
売上高が手元に残るお金ではありません。販売するためには売上原価がかかります。つまり、売上高から売上原価を差し引いた粗利益(限界利益)が手元に残るお金です。当然、売上原価を下げたほうが利益は確保できます。たとえば、輸入業を開業するとします。同業他社よりも安価で商品が仕入れられるなら、仕入ルートで同業他社より有利なことをアピールしましょう。

③ 経費
粗利益(限界利益)から経費を差し引いた金額が利益です。そのため、日本政策金融公庫は経費について神経質となります。たとえば、駅前の物件を借りることを検討したとします。そのとき、日本政策金融公庫は「路地裏の物件を借りれば家賃が下げられるのに」と考えます。しかし、駅前の物件を借りたほうが集客に有利など費用対効果を説明することが必要となってきます。

(5)キャッシュフロー残高がプラスになることを示す
特に保険診療のクリニックなど入金をするタイミングが数カ月後など遅い業種は利益と別にキャッシュフロー残高がプラスになることを説明しましょう。借入金は現金預金で返済しなければならないからです。そのため、日本政策金融公庫はキャッシュフロー残高のプラス・マイナスについて神経質となります。

(6)計画通りに利益が確保できない対応策を説明する
特に売上高は計画通りにいかない可能性があります。しかしそれでは、日本政策金融公庫は困ります。利益が確保できないことで借入金の返済が滞ることを恐れるからです。そのため、計画通りに利益が確保できないときの代替案を日本政策金融公庫に説明する必要があります。たとえば、生命保険を解約して調達した資金を借入金の返済に充てるなどが挙げられます。

まとめ

起業家・経営者はビジネスプランに自信があり、利益を獲得ができると見込んで融資を申し込みます。端的にいえば、理想主義です。一方、金融機関は借入金の返済能力を重視します。つまり、現実主義です。これら理想主義と現実主義の考え方のギャップを埋めることが融資を引き出すためのポイントです。そのためには、起業家・経営者は具体的な数字とその根拠を金融機関に説明する必要があります。それが実現できれば、融資を引き出しの成功に大きく前進するといえます。

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