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日本政策金融公庫からの融資の引き出しに成功する事業計画書の作成法

カテゴリ:税務・経理・決算

/公開日:2018年4月20日

会計
銀行融資は一発勝負です。万が一資金調達に失敗すれば、すぐに別の金融機関から融資を受けることは難しいでしょう。そのため、融資審査をクリアして、確実に資金調達に成功する必要があります。そのツールが事業計画書です。事業計画書の作成では、日本政策金融公庫の融資担当者に対して、借入金を返済が可能であることを説得することが求められます。そこで、事業計画書についていくつか重要なポイントを解説します。

融資を引き出すのに失敗または成功する事業計画書の特徴とは?

金融機関が会社へ融資をする基準は「貸したお金を返してくれるかどうか」です。もちろん、過去の実績を重視しますが、本当に知りたい情報は融資後における業績推移です。それを示すのが事業計画書であり、融資の引き出しを確実に成功させるためには、ぜひとも作成したいところです。

たとえば、日本政策金融公庫の創業融資、新事業を展開するための中小企業経営力強化資金などは事業計画書の作成が求められます。融資審査で事業計画書が重視されている証拠でしょう。をそこで、融資を引き出すのに失敗または成功する事業計画書の分岐点を見ていきましょう。

失敗する事業計画書の特徴

まずは失敗する事業計画書の特徴を見ていきましょう。
(1) 過去の実績のアピールが中心である
このケースは「今までのやり方が正しい」など過去の実績のアピールが事業計画書のメインになってしまっています。
(2) 内容が抽象的である
「これから一生懸命取り組みます」など抽象的な精神論に終始し、具体的なプランが提示できていないケースです。
(3) 他力本願の内容である
「融資を受けて資金調達しないと支払先に購入代金を支払えない」など融資の必要性に重点を置いた事業計画書が挙げられます。

上記(1)~(3)は借入金を返済するための具体的なプランが盛り込まれていない点で共通します。

成功する事業計画書とは?

融資の引き出しに成功する事業計画書は返済するための具体的なプランを盛り込むことに尽きます。そのためには、「事業計画書の作成→チェック→ブラッシュアップ」を繰り返し、綿密に作成することが求められます。実際に事業計画書を作成するときは、次の3つを盛り込みましょう。
(1) 会社の問題点と課題を示す
たとえば、「製造業が生産能力の不足で販売数量に限界がある」「クリニックが一日で診られる患者数は限られてしまう」など具体的な問題点や課題を示す必要があります。
(2) 上記(1)の問題点と課題を解決するために資金調達が必要なことを示す
調達した資金の使途によって問題点と課題が解決できることを示すことが必要です。上記(1)を例にするなら次の通りです。
① 製造業:生産能力をアップさせるための新たな設備投資の購入資金を調達で増販につなげる
② クリニック:分院の物件とその改装費用などに資金を投入して増患につなげる
(3) 借入金を返済できることを数字で示す
たとえば、上記(2)の製造業が増販、クリニックが増患することで、獲得した利益から借入金を返済できることを具体的な数字で示す必要があります。仮に製造業が増販に成功しても、入金できなれば借入金の返済は不可能です。そのような事態に陥らないためには、事業計画書を作成する段階でお金の動きや蓄えなどをシミュレーションすることが必須です。

成功する事業計画書を作成する9つのポイント

確実に融資の引き出すに成功ためには、綿密な事業計画書の作成が必須です。それによって、日本政策金融公庫の融資担当者に対して、借入金を返済してくる会社であることを説得することができます。そこで、事業計画書を作成するポイントについて解説します。

1.事業計画書は5年後の目標を数字で設定する

日本政策金融公庫は「融資先が獲得した利益から借入金を返済してくれる」ことを期待して融資します。当然、融資担当者は融資後における業績の推移を注視します。そこで、5年後の目標を数字で示すにより、日本政策金融公庫の心証はよくなるでしょう。その5年後の目標の実現性をアピールするために、融資後1~4年間までの業績の推移を1年スパンで示しましょう。

2.事業計画書には2つの視点を盛り込む

そもそも会社には自社の強みや弱みがあります。また、同業他社が存在するため、たとえ好景気の業種でも集客に結びつくとは限りません。そこで、5年後の目標を実現するために2つの視点を盛り込みましょう。
(1) 自社の強みを伸ばし、弱みを克服する方法
たとえば、介護事業を展開しているとします。強みがサービスの質ならさらに伸ばす施策を盛り込みます。一方、弱みがヘルパースタッフの不足なら増員計画など克服方法を事業計画書に記入しましょう。
(2) 同業他社との差別化
たとえば、中華料理店が狭い繁華街に密集しているとします。そのとき、繁華街とは別に、オフィス街で弁当を販売すれば、販売エリアが広がります。また、店舗内での食事の提供と違い、販売数量は顧客の回転数や売場面積の制約を受けません。これらは他の中華料理店との差別化になるため、事業計画書に入れるべき内容です。

3.代表者の経歴は時系列で振り返る

代表者の経歴は「経営者にふさわしい人物とアピールする内容」と「開業する業種での経験値」を記入します。ただ、過去を洗い出すだけでなく、時系列で振り返り自社の強みと弱みを明確にしましょう。

また、経験値については経営資源といわれる「ヒト・モノ・カネ」を意識することがポイントです。
(1) ヒト(人事)
たとえば、管理職として部下をマネジメントした経験などは経営者として従業員を使う上でのアピールポイントです。
(2) モノ(販売)
たとえば、営業職での経験や販売職で増販するための企画を立案した経験など、販売に携わったことを盛り込みましょう。
(3) カネ(財務)
たとえば、経理職での業績管理の経験は計数管理に強いことの証明につながります。

4.会社概要または創業動機を記入する

すでに開業しているなら会社情報、創業前なら創業動機を記入します。記入する内容は次の通りです。
(1) 会社概要
大まかな会社の情報を記入します。おもに次の内容が挙げられます。
① 資本金
② 従業員数
③ 本店の住所
④ 支店や営業所の情報
⑤ 役員の役職と氏名
など
(2) 創業動機
やる気をアピールするのがポイントです。そのため、前向きな内容にするのが鉄則です。過去を否定するなど後ろ向きでは日本政策金融公庫の心証を悪くします。

5.事業内容で商品やサービス内容を明確にする

そもそも日本政策金融公庫の融資担当者は融資先の業界について詳しくありません。だからこそ、融資後に販売できるかどうかについて神経質になります。そのため、商品やサービス内容を明確にする必要があります。そこで、記入項目の具体例を挙げましょう。
(1) 顧客ターゲット
たとえば、美容室なら立地場所によって顧客ターゲットが異なります。駅前など繁華街では駅を利用する会社員やOL等すべての人がターゲットとなります。一方、郊外なら地元の住人に対してサービスを提供します。
(2) 取り扱う商品やサービス
上記(1)の美容室ならシャンプーなどの商品やカット、前髪カット、カラーリングのサービスメニュー、それらの料金を記入します。
一方、商品の仕入先や外注先についても社名や支払い条件などを事業計画書に盛り込みます。
(3) 販売方法
上記(1)の美容室の立地場所が繁華街なら看板を目立つ場所に設置する、郊外で地元の住民を相手にするなら、継続的に来店してもらうために「シャンプー無料のクーポン券」を活用するなど、販売方法の概要を記入します。

要するに誰に何をどのようにして販売するのかを明確にすることがポイントです。

6.根拠に基づく売上予測をする

そもそも事業計画書の作成で不確定要素なのが売上高です。仕入高は販売数量から予測ができ、経費は家賃や従業員数から計算できます。借入金の返済が可能かどうかは売上高に左右されるため、予測は根拠に基づいて行う必要があります。
たとえば、繁華街でアパレルショップをオープンするとします。立地場所における通行人数のデータから時間別や曜日別の来店客数を予測し、そこから販売数量、客単価、売上高が計算できます。また根拠の例として、インターネット上のアンケート結果(顧客のニーズ)やお客様の声(実績)などが挙げられます。

7.集客方法とその効果を具体的に記載する

集客方法はWeb上の問い合わせフォーム、チラシの配布など集客方法とその効果の見込みを具体的に記載する必要があります。たとえば、オフィス街の居酒屋が集客に力を入れるとします。その手段として、「ランチ営業を通じて会社員に店の存在を周知して、単価の高い夜の営業での集客につなげる」といった内容を記載します。

8.資金計画を記載する

資金計画とは、「いくら設備投資するのか」または「商品の大量購入によりお金が不足するのか」などにより、おもに次の項目を記載します。
(1) 資金使途と借入希望額
たとえば、「物件の保証金100万円、機械装置1,000万円」など設備投資に必要な設備資金や「売上代金が入金されるまでに賄う経費2カ月分500万円」などの運転資金の不足額を記載します。
(2) 借入金の返済プラン
たとえば、「5年間で元金20万円を均等返済する」など希望する返済プランを記載します。

また資金計画では、資金使途によって次のことが問われます。それを意識した内容をきちんと盛り込みましょう。
・設備資金:生産能力の向上など自社の課題解決能力
・運転資金:本当に運転資金が不足するかどうかの必要性

9.5年間の予測財務諸表から事業計画書を練り直す

そもそも財務諸表とは次の表を指します。
(1) 資金繰り表
自社の現金収支を示す表です。資金繰り表を作成することで、「何年後のどの月に資金ショートするのか」を予測でき、事前に融資を申し込むことができます。
(2) 損益計算書
売上高、売上原価、経費、利益を示す表です。事業活動により採算額が把握できます。
(3) 貸借対照表
事業活動の結果、現金預金などの蓄えた資産、借入金残高など債務を示す負債、資本金や内部留保など資本を示す表です。

予測財務諸表からさまざまな経営指標をチェックすることで、本当に事業計画書の内容が適切かどうかを精査することができます。たとえば、介護事業の売上高と利益を予測したとします。仮に売上高に占める利益の割合が同業他社より著しく低い場合は、経費が多すぎることがわかります。従業員の人数を見直すなど事業計画書の内容を再検討しなければなりません。

このようにさまざま経営指標をチェックして、事業計画書のブラッシュアップを繰り返すことで、融資の引き出しを確実にすることができます。

まとめ

融資の引き出しに成功する事業計画書は経営指標を用いて「作成→チェック→ブラッシュアップ」の繰り返しができるかどうかにかかっています。日本政策金融公庫は各業種の経営指標を熟知しているため、予測財務諸表と業界水準を照らし合わせ、比較することができます。つまり、事業計画書の作成は業界水準を加味し、ブラッシュアップした内容と予測財務諸表により、借入金を返済できることをアピールしましょう。

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