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保証協会は銀行のために存在するの?企業が有効活用する方法を解説

カテゴリ:税務・経理・決算

/公開日:2018年5月10日

会計


信用保証協会が保証する融資制度を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。銀行も積極的に保証協会付き融資を推進します。しかし、この融資制度を有効活用できている企業は多いとは言えません。そこで、保証協会付き融資について、次の順序で解説します。
(1) 保証協会付き融資が受けやすい理由
(2) 保証協会付き融資についての詳しい内容
(3) 有効活用をする方法
特に(3)では、銀行の言いなりになって保証協会付き融資を受けると思わぬ落とし穴が待っていることについても触れます。

保証協会付き融資は受けやすい

そもそも銀行融資は2種類に大別できます。それは「プロパー融資」と「保証協会付き融資」です。両者を比較することにより、保証協会付きの融資のほうが受けやすいことは分かります。

プロパー融資

プロパー融資は銀行が自己責任の下で企業へ融資するスタイルです。たとえば、クリニックに1,000万円を融資して、業績悪化により300万円の返済不能になったとします。銀行にとっては同額(300万円)が貸し倒れによる損失です。つまりプロパー融資は、企業へ融資をした結果、貸し倒れの金額について銀行が自己責任を負います。

保証協会付き融資

保証協会付き融資は銀行の貸し倒れの金額を信用保証協会が保証する融資スタイルです。仮に銀行が前述のクリニックに対する貸し倒れ300万円でも、そのうち信用保証協会が80%または全額を保証してくれます。そのため、銀行の損失は全額ではなく、最大「300万円×20%=60万円」で済みます。

銀行の視点から見れば、貸し倒れによる損失のリスクが回避できる保証協会付き融資のほうが企業へ融資しやすいです。

保証協会付き融資を詳しく解説

銀行が貸し倒れによる損失を信用保証協会に補てんしてもらえるのには理由があります。それを知ることが保証協会付き融資を上手に活用するために必須です。

信用保証協会は公的機関

信用保証協会は公的機関である以上、2つの特徴があります。
(1) 非営利団体
もともとプロパー融資をしづらい企業への融資を促進するために設けられた団体です。そのため、企業が保証協会付き融資を受けやすいのは当然です。
(2) 財源は税金
公的機関であるため、財源は税金です。そのため、消費税などの税金を滞納して完納の見通しの立たない企業は保証協会付き融資を受けられません。

銀行の貸し倒れに対する保証制度の内容

保証協会付き融資の保証制度は、銀行の貸し倒れのうち80%を保証する「責任共有制度」を採用しています。しかし、次の融資は責任共有制度の対象外であり、全額保証します。

  • セーフティネット保証(経営を安定させる目的の融資)
  • 災害関係保証
  • 創業関連保証(再挑戦支援保証を含む)
  • 小口零細企業保証

企業側からみた保証協会付き融資の特徴

今度は保証制度を企業側から見ていきましょう。銀行の貸し倒れを保証した金額は信用保証協会へ返済することになります。つまり、借入金の返済先が銀行から信用保証協会に代わることを意味します。

企業は利息とは別に保証料を負担する

保証協会付き融資を受ける場合、借入金利息と別に信用保証協会に対して保証料を負担します。保証料は企業の返済不能による貸し倒れに対する銀行の保険料に相当するため、倒産の確率で算定します。その確率は中小企業基盤整備機構「経営自己診断システム」の「CRD(クレジット・リスク・データベース)」で参照できます。用意するものは2期分の決算書です。保証料はCDRによる決算書の評価と経営環境(定性要因)に基づき9段階(年0.45%~1.9%)の保証料率に融資額を掛けて求めます。

原則、担保と連帯保証人は不要

信用保証協会が銀行の貸し倒れを保証するため、返済不能によるリスクが軽減されます。そのため、担保と法人代表者を除いた連帯保証人は不要なのが原則です。つまり、連帯保証人は法人の代表者のみです。個人事業主の場合の連帯保証は必要ありません。

しかし、愛知県信用保証協会の場合、次の場合は愛知県内の不動産や有価証券などの担保が必要です。

  • 保証期間が10年以上の場合
  • 保証協会付き融資の合計額が8,000万円を超える場合

保証協会付き融資の融資限度額は担保の有無で異なる

企業が不動産や有価証券など担保を差し出せば、銀行の貸し倒れのリスクが軽減でき、保証する側の信用保証協会にとってはメリットがあります。たとえば、銀行の貸し倒れが3,000万円あるとします。仮に企業が土地を担保に差し出している場合、銀行は土地を売却して現金預金に替えることができ、融資額の回収に充てられます。貸し倒れに対するリスクの差があるため、担保の有無で融資限度額が異なります。

  • 担保なしの限度額:8,000万円
  • 担保ありの限度額:2億8,000万円

借入月商倍率が融資額を左右する

融資限度額まで融資が受けられるとは限りません。あくまでも保証協会付き融資についての融資枠に過ぎません。実際、企業への融資額は借入月商倍率によって影響します。借入月商倍率は次の算式で計算します。

  • 銀行からの借入金総額÷月商

たとえば、月商5,000万円の企業の借入金が甲銀行1億円、乙信用金庫5,000万円、総額1億5,000万円とします。借入月商倍率は「借入金総額1億5,000万円÷月商5,000万円=3倍(3か月分)」です。

製造業やサービス業など業種によって、融資額の目安となる借入月商倍率の基準は異なりますが、借入金の使途が運転資金の場合は次の値が目安となります。

借入月商倍率 備考
~3カ月以内 安全圏
3カ月~4カ月 やや危険
4カ月以上 危険

※業種によりその目安は異なりますので、大まかな目安としてお考えください。

どの銀行から借りても融資枠は同額

保証協会付き融資は銀行が企業へ融資を行いますが、銀行単位で融資枠(融資限度額)が定められているわけではありません。あくまでも全ての銀行からの借入金を合計します。たとえば、無担保の企業が保証協会付き融資をC銀行から3,000万円、D信用金庫から5,000万円、総額8,000万円受けているとします。すでに融資枠の8,000万円に達しているため、別の銀行から保証協会付き融資により借り入れることは不可能です。仮に資金調達するならプロパー融資しか選択肢がありません。

対象企業

保証協会付き融資は中小企業が対象です。具体的には業種ごとに次の通りです。
※資本金・常時使用の従業員はいずれも満たす必要があります(事業規模)

対象業種 資本金 常時使用の従業員数
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
製造業、建設業、運送業 3億円以下 300人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
医療法人等 300人以下

対象外の企業

事業規模の大きい企業などは保証協会付き融資の対象外です。おもに対象外企業は次の通りとなります。

  • 上記表の対象企業よりも事業規模の大きい企業
  • 許認可の必要な事業で、許認可等を受けていない企業
  • 税金を滞納し、完納の見通しが立たない企業
  • 手形、小切手の不渡りがあり銀行取引停止処分を受けている企業( 法人の場合は、代表者を含む)
  • 借入金の返済を延滞している企業

いつでも融資が受けられる予約融資制度

対象企業に対して、「将来において一時的に必要な場合」かつ「緊急の資金ニーズに備えるため、保証協会付き融資を予約する制度であり、当座貸越に近い性格を持ちます。事前に決算書を用意し、信用保証協会や銀行の審査を通過すれば、使いたいときに融資が受けられます。おもな内容は次の通りです。

  • 融資限度額:2,000万円
  • 必要な手続き:最長1年ごとに申請が必要
  • 保証期間:5年以内
  • 保証人の有無:原則は法人代表者のみ(個人事業主は不要)

※この融資は建設業など、先行してお金の支出が見込まれる業種にとっては使いやすい融資制度と言えます。

知っておきたい保証協会付き融資の活用法

前述の通り、保証協会付き融資はプロパー融資より銀行から融資が受けられやすいです。しかし、融資限度額や保証料の負担などのデメリットが存在します。そこで、上手な活用法を紹介します。

銀行との信頼関係の構築に活用する

銀行は返済実績の乏しい、業歴が浅い、担保を提供する資産がない企業に対してプロパー融資をしたがらない傾向です。そのため、信頼関係の構築を含めて、保証協会付き融資を受けることが有効です。特に新規の銀行と付き合うための入り口に向いています。

保証協会付き融資でなく、プロパー融資を狙う

前述の通り、保証協会付き融資には融資限度額が設けられています。しかも、プロパー融資よりも融資を受けるハードルが低いです。そのため、資金調達が必要なときに備えて、なるべく保証協会付き融資の融資枠は確保しましょう。

しかし、銀行は同じ企業への融資なら貸し倒れのリスクが低い保証協会付き融資をしたがるでしょう。だからこそ、「プロパー融資を希望する」と融資担当者に主張する必要があり、言いなりにならないように注意する必要があります。

保証協会付き融資による借入金の一本化には安易に応じない

銀行は企業に対して複数の借入金を一本化にすることを提案してきます。たとえば、担保を差し出している企業の借入金の内訳がプロパー融資1億円、保証協会付き融資が9,000万円と8,000万円の2本、総額2億7,000万円あるとします。仮に保証協会付き融資により借入金を一本化した場合、利用する融資枠がプロパー融資1億円だけ減少します。それでは、保証協会付き融資が利用できなくなり、今後の融資を受けるのに不利になってしまいます。そのため、安易に保証協会付き融資による借入金の一本化に応じないようにしましょう。

借り換え保証制度融資は慎重に検討する

複数の保証協会付き融資による借入金を一本化にし、返済期間の伸ばすことで、毎月の返済額を減少させるのが借り換え保証制度融資です。たとえば、3カ所の銀行から保証協会付き融資による借入金が合計9,000万円あるとします。それを一本化して、毎月の返済額を「15万円→10万円」といったように減少すれば、資金繰りは楽になります。

しかし、銀行が借り換え保証制度融資を提案するということは、「返済が苦しいのでは」と融資している企業をマイナス評価しているからです。そのため、この融資を受ければ、新たな融資が受けづらくなる可能性が高いです。したがって、「毎月の借入金の返済額を減らして当面の資金繰りを楽にするか」または「新規の融資を受けられる選択肢を残すのか」を検討したうえで、借り換え保証制度融資を利用するかどうかを検討しましょう。

まとめ

保証協会付き融資について押さえるべきポイントは5つです。
(1) プロパー融資よりも融資が受けやすい
(2) 銀行はプロパー融資よりも保証協会付き融資を進めたがる傾向にある
(3) 融資枠が限られている
(4) 融資枠を確保するため、できるだけプロパー融資を狙う
(5) 銀行との信頼関係の構築に有効な融資制度である

以上の内容を踏まえた上で、保証協会付き融資を有効活用しましょう。

保証協会付き融資について詳しく知りたい方は下記もご覧ください。

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