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試算表の見栄えを良くする!DESとは?

カテゴリ:税務・経理・決算

/公開日:2019年9月4日

中小企業の試算表において役員借入金が多額にある場合、ある手法を使えば試算表の見栄えをよくすることができます。それがDES(デッドエクイティスワップ)です。

DESとは

DESとは債務(Debt=デッド)と株式(Equity=エクイティ)を交換(Swap=スワップ)ことでありその略称で、デスと読みます。

具体的には過剰債務、財政破綻状態にある企業の債務を債権者が債権による現物出資を行い株式化すること、又は債権者が金銭出資を行い、株式を取得し、その出資で債務の弁済を受けることで有利子負債を削減させることをさし、企業再生及び財務改善をおこなうための一つの手段です。

DESは対金融機関の借入金等について行い、企業は債務を減らすことが出来、金融機関にとっては財務が健全化するので債務者区分が上がる可能性が高く、かつ企業再生により回収可能性も高まるというものもありますが、今回は役員からの債務である役員借入金におおけるDESについてご紹介致します。

DESのメリット

企業は役員借入金の返済が不要になる

役員借入金にDESを行うということは、その役員からの借入金は現物出資という形で資本金に振り替えることが出来ます。つまり企業の負債が株式へと振り替わります。

これにより役員借入金が消滅するため、その借入金の元金の返済と、利息の支払いが不要になります。
また株式を取得する役員にとっても、株を取得することで株主総会への参加等、経営に対しての影響力を持つことが出来ます。

利息の支払いが配当の支払いに変わる

DESを行うことで、それまでは役員借入金に対して利息を支払うべきところを、役員の保有する株式に応じた配当の支払いに変えることが出来ます。

役員借入金に対する利息は、企業の経営成績によらず支払うべきものですが、配当であれば起業の経営成績によって支払金額を定めることが出来るため、同じように役員に支払うべき金額であっても、配当の方が企業の判断による支払が出来るといえます。

また配当を受け取る役員にとっても、DESを行った後に企業の経営状況が良くなる場合には、役員借入金利息以上の配当金の受け取りを見込むことが出来ます。

試算表の見栄えが良くなる

DESを行うことで負債が少なくなると、試算表の見栄えが良くなります。試算表の見栄えが良くなるということは、金融機関から新規借り入れを行う際に与信審査の評価が上がり、借入を行いやすくなります。

またDESを行うことで負債が少なくなると同時に、資本金が増加します。

よってすべての資本のうちの自己資本と呼ばれる返済の必要のない資本金や自己株式等がどれくらいの割合であるかを表す自己資本比率が上がるという点でも試算表の見栄えが良くなり、資金繰りとして余裕のある企業に見えることから、相対的な信用力が上がるともいえます。

相対的な信用力が上がることで、取引先や投資者の新規開拓等が行いやすくなります。

役員の相続対策として有効

役員借入金を出資していた役員が死亡した場合、その役員借入金は企業の帳簿価格とその役員借入金に対する未収利息が役員の相続財産として課税がされます。しかしDESを行った後に役員が死亡した場合は、役員の相続財産は企業の株式で評価をされます。

企業の経営状況が悪く、役員借入金の全額の支払いが見込めない場合には、借入金を現物出資に振り替えたことよって増加する資本金は、回収可能額をもとに評価した額になり、当初の振替前の借入金金額よりも低い金額となります。

この場合、役員が出資した資本金金額が借入金金額よりも少なくなることから、役員の相続財産である株式は、当初の借入金金額よりも少なくなり、相続財産が減少します。

また役員借入金と同額の資本金を増加させる場合にも、相続時において自社株式の評価は純資産価額方式と類似業種比準価額方式を用いた評価を行うため、借入金の帳簿価格での評価よりも少ない評価額になる場合が多いです。

相続財産そのものや、相続財産の評価額が少なくなるため、DESは相続対策として有効です。

DESのデメリット

登記費用がかかる

DESは増資を伴う手続きであるため、登記が必要となります。登記手続き、及び登記費用が発生します。

登記の手続きには登記申請書の他に株主総会議事録、総数引受契約書、総勘定元帳等の会計帳簿、資本金の額の計上に関する代表取締役の証明書等が必要です。

登記費用には登録免許税が最低3万円、もしくは増資金額の1,000分の7の金額と、司法書士に依頼をする場合は、司法書士に対する報酬が必要です。

債務超過の企業に対してのDESは債務免除益がたつ場合がある

企業の経営状況が悪く、役員借入金の全額の支払いが見込めないような債務超過の場合には、借入金を現物出資に振り替えたことよって増加する資本金は、回収可能額をもとに評価した額になり、当初の振替前の借入金金額よりも低い金額となります。これは役員の相続財産が少なくなるという点ではメリットですが、企業にとってはその差額が利益とみなされ債務免除益がたつというデメリットにもなります。

債務免除益がたつということは、企業の利益が増加し、法人税額の増加を表します。毎期赤字であり、繰越欠損金が多く、その繰越欠損金内の黒字であれば、DESを行った期の法人税の支払いは免れることが出来ますが、そうでない場合は債務免除益の金額に応じた法人税の負担が生じます。

債務免除益の発生を回避する手法として疑似DESがあります。疑似DESとは役員が企業の株式を引き受けて現金を払い込んだうえで、企業は払い込まれた現金をもって借入金を返済するという方法で、間に現金が介在する点がDESとは異なります。

擬似DESを行った場合は、間に現金が介在するため、一度役員が企業に金銭出資するという段階を踏むための出資用資金の確保が必要となりますが、企業は通常の新株発行と、現金による借入金の返済であるため、債務免除益の発生はありません。

資本金額が1億円を超えると中小企業としての優遇措置を受けることが出来ない

資本金額が1億円以下であった中小企業が、DESを行うことで資本金額が1億円を超えた場合には、中小企業としての優遇措置が受けることが出来なくなります。

資本金額が1億円以下である中小企業は、法人税率の軽減、機械などの特別償却、試験研究費の税額控除、人材投資促進税制 、交際費の控除限度額等において、大企業よりも優遇された税制があります。

株主構成内容が変わる

役員借入金に対してDESを行う場合、役員借入金が株式へと振り替えられます。よって役員借入金の金額や相手によっては、企業の意図せぬ相手が筆頭株主になる可能性もあります。株式会社の意思決定機関は株主総会であり、株を多く保有している役員の意見が、企業の意思となります。

株主構成内容が変わることで、企業の運営に支障をきたす場合もあります。

まとめ

DESは試算表の改善、借入金や支払利息の返済義務の免除による資金繰りの改善等のメリットが大きいので企業の役員借入金が大きい場合には、財務改善のためによく検討に上がる手法の一つです。

一方で上記のようにデメリットもあり、特に役員借入金が大きい場合には債務免除益についての法人税の発生については検討すべき事項となります。

よって、よく検討に上がる手法でありながら、慎重に進めるべき手法ともいえます。
DESについてのご相談がございましたら、お気軽に弊社までご連絡くださいませ。

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