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既存会社の派生としての別会社の設立。類似業種の別会社を設立する際の注意点は?

カテゴリ:会社設立・起業

/公開日:2018年11月1日

会計

現在会社を経営している場合、消費税の観点等から別会社を設立することを考えられたことは無いでしょうか?今回は類似業種の別会社を設立する際の注意点をご説明します。

会社を分けるべき明確な理由があるか

事業に明確な分けるべき基準がある

 会社を分けるあたり、何をもって別会社であるとするかという基準が必要です。事業目的や取扱商品が異なるなどといった明確な違いがあるようにします。

 例えば介護用品を生産販売していた会社が、生産部門と販売部門とに分けるとして元の会社を生産に特化した会社にし、別会社を販売に特化した会社とする場合や、新たに介護サービスを行う会社を設立するなど、明確な基準があるようにします。

租税回避目的ではないことを立証できる

 消費税の観点等から別会社を設立することは、有効な策ではありますが、有効な策であるからこそ税務署に指摘をされがちです。別会社であっても各会社の経営者が同一人物である場合や、また親族などの関係の近い人物である場合などは、租税回避のための資金の移動や収益や費用の付け替えが容易に出来てしまうためです。新たに設立した別会社が類似業種であり、その事業内容が元の会社と似ているものであればあるほど、租税回避目的ではないかと、税務署に懸念をされます。

 このように税務署に指摘をされないためには別会社の設立が租税回避目的ではないことを立証できなくてはなりません。

 例えば、銀行口座をそれぞれの会社名で契約し、明確に資金の移動履歴が残るようにする、会社間の収益や費用の付け替えは行わず、それぞれの会社名義で請求をした売上、請求をされた費用のみを計上する、などと完全に別の立場で会計処理を行っているという書類を残すことが重要です。

 租税回避目的ではなく、別会社の設立は上記①のような明確な分けるべき基準をもって、事業活動そのもののために行ったものと提示できるようにします。

競業避止義務に抵触しないか

 競業避止義務とは地位を私的に利用して、事業者の事業と競争的な取引をしてはいけないという義務です。特に元の会社の取締役など地位のある人が、その知識や経験を利用して、個人事業主となり別会社を設立する場合は義務違反になりかねません。

別会社の設立によるメリット

消費税

 消費税は原則設立より2年間が免税期間となります。新たに別会社を設立した場合、その別会社での事業活動は2年間免税事業者となるため、消費税の支払い義務が発生しません。

 また、消費税の課税事業者となるのは基本的には課税売上高が1,000万円超の事業者です。課税事業者であった元の会社が、別会社を設立したことにより元の会社の課税売上高が1,000万円を下回る場合、また別会社も1,000万円を下回る課税売上高であれば、2社ともに免税事業者になることが出来ます。

法人税

 中小企業であれば、法人税の軽減税率が法人税額の計算時に適用されます。1事業年度の所得が800万円までは、800万円を超える所得よりも低い税率が適用されます。元の会社が800万円を超える所得がある場合、それを超えた部分については高い税率が適用されますが、別会社を設立し2社それぞれの所得が800万円未満であれば、低い税率が適用されます。

 2社合計では1,600万円までの所得が低い税率で法人税額を計算することが出来ます。

事業税

 上記と同様に、事業税も段階的に異なる税率が定められ、所得の低い方が低い税率を事業税の計算時に適用することが出来ます。

交際費

 中小企業であれば、交際費が1事業年度当たり800万円までが会計上の費用だけではなく、法人税法上の損金としても認められ、法人税額を減少させる費用として認められています。

 元の会社で800万円を超える交際費を計上していた場合、それを超えた部分については法人税法上の損金として認められないですが、別会社を設立し2社それぞれの交際費を800万円未満にすることで全額損金として認められ、2社合計では1,600万円までが全額損金として認められます。

減価償却資産

 中小企業であれば、30万円未満の減価償却資産が1事業年度当たり300万円までが資産計上せずに支出した事業年度に消耗品費などの経費計上をすることが認められています。これも上記と同じように2社合計では600万円までが経費計上をすることが認められます。

退職金

 元の会社の役員や従業員を、別会社の設立により元の会社を退職させ、別会社に再就職をさせ移籍する場合は、元の会社において退職金を計上することが出来ます。移籍時のみに発生するメリットではありますが、一般的に退職金は金額が大きく、会社にとっては多くの費用が計上することが出来、利益を少なくすることが出来ます。利益を少なくすると期末に支払うべき法人税額が減少します。

 また移籍者にとっても退職所得金銭を受取ることが出来、給与所得よりも有利な所得税額の負担であるため、受け取る側にもメリットがあります。

別会社の設立によるデメリット

税務署からの指摘の可能性

 上記のように、租税回避を懸念され指摘を受ける可能性があります。また上記のようなメリットを追うあまり不適切な会計処理を行うと、税務署からの指摘により本来支払うべき税金よりも、ペナルティとして多額の税金の支払いを求められる場合があります。

会社設立コストの発生

 別会社の設立には、法人であれば登記費用が必要であり、かつ別会社用の定款や印鑑の作成、各種届出などの金銭的、事務的コストが発生します。

管理、維持コストの増加

 別会社の設立以後も、元の会社を分散させた、または新規展開をした分の日々の管理コストは増加します。また社内の管理コストのみならず、会社は赤字であっても均等割として1事業年度当たり最低70,000円の税金が発生します。これは会社ごとに必要であるため、元の会社のみであれば70,000円の均等割(地域によって多少金額は異なります)の支払いですが、別会社の設立によってこの均等割りが140,000円に増加をします。

赤字と黒字の相殺がしにくい

 青色申告を行っている会社は、法人税の計算上で赤字は10年間繰り越すことが出来、黒字になった年度はその赤字と相殺することが出来ます。この相殺を行うことで法人税法上の利益金額を少なくさせることが出来、法人税の納付金額を少なくさせることが出来ます。これは同じ会社内での赤字と黒字の相殺です。

 元の会社の1年目が赤字、2年目が黒字の場合は、1年目と2年目を相殺させることが出来ますが、元の会社の赤字と別会社の黒字は相殺することが出来ません。

事業活動の機敏さが失われる可能性がある

 別会社の設立により、元の会社とは別組織として事業が遂行されるため、元の会社からの指示や、別会社からの報告などが届きにくくなる可能性があります。また一つの会社ではなくなるため、グループとしての事業活動であることを経営者は意識をする必要があります。

まとめ

 このように別会社の設立はメリット、デメリットがあります。税額に対するメリットは非常に大きいものの、そのメリットが大きいからこそ税務署からの指摘の可能性は高いです。特に類似業種の設立には注意が必要です。指摘を受けないためにも正当な理由をもって別会社は設立するべきでしょう。

 弊社では会社の状況を伺いながら、別会社の設立により具体的な数字でどの程度のメリットがあるかを検証し、またその場合はどのデメリットに気を付けたら良いかなど、様々なアドバイスを行うことが出来ます。

 会社の設立に関しての不安や疑問など、何でもお気軽にご相談いただければ幸いです。

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