飲食店は要注意!賄い料理は給与課税されることも!!
カテゴリ:税務・経理・決算
/公開日:2019年5月1日
飲食店は福利厚生として賄い料理を従業員に提供しているところもあることでしょう。飲食店の求人広告でも「賄い料理付き!食事代も浮く職場です!お得に働きましょう!!」といったような内容の文言がよく見られます。
このようなものを目にすると、従業員には全く金銭的な負担が無く賄い料理が提供されるものだと思われがちですが、金額によっては賄い料理が給与支給と同様に扱われ、給与課税され、源泉所得税の対象となります。
今回は賄い料理について、どのような場合に給与課税されるのか確認をしましょう。
賄い料理の提供を福利厚生費とするための要件
賄い料理の提供を、給与課税をされることなく福利厚生費として処理するには、以下の2つの要件を全て満たす必要があります。
①従業員に支給した食事について、使用者が負担した金額が一カ月あたり3,500円(税抜)以下であること
この使用者が負担した金額とは、食事代から従業員が負担した金額を差し引いたものです。
②従業員が食事代の価額の半分以上を負担していること
食事代とは、使用者が調理した場合は食事の材料や調味料などの直接費の額、使用者が購入をした場合はその食事の購入金額です。
よって飲食店が自社の提供しているメニューを作るにあたり余った材料で作られた賄いはその材料費を、他社の弁当を支給している場合はその購入金額を食事代とします。
また、①、②共に従業員とは役員を含めた使用人全てが対象となります。
①、②を満たす場合と満たさない場合を具体的に説明すると、一カ月の勤務日数が20日の日勤の従業員の昼食のために外部から毎日500円(税抜)の弁当を購入し、その購入金額のうち400円を従業員が負担している場合、使用者が月に負担する金額は2,000円(税抜)、従業員も半分以上の価額を負担しているため、①と②を共に満たし、給与課税されることなく福利厚生費として処理をすることが出来ます。
一方で一カ月の勤務日数が20日の日勤の従業員のために社員食堂で作られた材料費が100円である社食を無料で提供していた場合には、使用者が負担する金額は2,000円(税抜)ですが、従業員の負担が無いため、②を満たさず、給与課税の対象となります。
無料の賄い料理の提供は原則給与課税ですが、例外として残業又は宿日直を行うときに支給する食事は、無料で提供しても給与として課税しなくてもよいことになっています。
給与課税の対象となる賄い料理の影響
給与課税の対象となるからといって、賄い料理の提供を止める必要はありません。給与課税の対象となる場合はどのような影響があるかを紹介致します。
従業員
給与課税の対象となる賄い料理は、現物給与と呼ばれ、実際の金銭の支給は無いが金銭と同等の価値を渡していると判断され、源泉所得税が差引されます。
現物給与とされ源泉所得税の計算元となる金額は、食事代であるため、高額な源泉所得税の課税が発生することは考えにくいですが、それでも従業員に支給される手取り金額は少なくなります。
給与課税がされ源泉所得税を多く天引きされるようでも、賄い料理の提供を受けた方が得であると考える従業員もいれば、給与課税されるのであれば賄い料理の提供を受ける必要はないと考える従業員もいることでしょう。
賄い料理をはじめとする福利厚生は従業員の就業意欲の向上が主目的ですので、従業員の価値観に合わせて判断すると良いでしょう。
使用者
福利厚生費として賄い料理を提供することと、給与課税の対象として賄い料理を提供することは、提供の時点では金銭の負担は変わりありません。
しかし会社が課税事業者である場合には、福利厚生費としての賄い料理を提供することの方が、消費税の点で有利といえます。
福利厚生費は会計上消費税の課税対象となりますが、給与は消費税の課税対象となりません。会社の消費税は受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて計算がされるため、消費税の課税対象の経費が多い方が、会社が納付すべき消費税が減ります。
福利厚生費であることの方が有利にはなりますが、従業員と同様に消費税の計算元となる金額は、食事代であるため、高額な消費税の節税になることは考えにくいです。
税務調査でのポイント
給与課税すべき賄い料理を提供していて、それを給与課税せずに会計処理を行っていた場合、源泉所得税と消費税の観点から税務調査で指摘を受ける可能性があります。指摘を受けた際には、本来納めるべき源泉所得税と消費税を遡って納める必要がある他、不納付加算税等のペナルティとしての税金の支払いを求められます。
賄い料理の提供、という一つの内容で、複数の税目の間違いが発見される可能性があることから、税務調査では飲食店の場合は特に調査官が着目するポイントでもあります。
それでは実際に帳簿上で調査官がどのような点から賄い料理が給与課税されるべきものではないか、と判断をするのか紹介致します。
個人事業主
飲食店である個人事業者が賄い料理等を、本来の販売目的とは異なり家族や知人、従業員等に販売した場合、その金額は家事消費として会計処理を行います。
家事消費として会計処理をするということは、扱いは売上と同様で、収入であり、青色申告の決算書では家事消費等の科目に記載をします。
賄い料理の提供をしている実態を正確に帳簿に反映をしていれば、この家事消費等の科目に数字が記載されているはずであり、調査官のチェックするポイントになります。
その他には賄い料理の実態が無いと主張をしても、売上と仕入の比率を見た際に、明らかに売上が少なく、仕入れた材料が不当に使われているのではと疑念が持たれる場合には、賄い料理の実態があるのではと指摘される場合もあります。
法人
飲食店である法人が、賄い料理等を提供し、従業員が食事代の価額の半分以上を負担し福利厚生費としている場合は、正しく会計処理を行っていればその従業員から受け取った食事代は雑収入に計上がされているはずであり、調査官のチェックするポイントになります。雑収入に計上が無い場合は、無料で賄い料理を提供しているのでは、つまり福利厚生費ではなく給与課税すべきものでは無いかと指摘を受けることが考えられます。
賄い料理の実態が無い場合は勿論雑収入に計上されることはありませんが、個人事業主と同様に売上と仕入の比率から、賄い料理の実態があるのではと指摘される場合もあります。
まとめ
以上のように、賄い料理には給与課税される場合があります。福利厚生として従業員に還元したいと思う気持ちは、大変すばらしいことですが、度を超した賄い料理は福利厚生費として処理が出来ない他、従業員にも源泉所得税の負担を求めることになります。
賄い料理のみならず、社会通念上必要と思われる範囲を越しての福利厚生、例えば高額な金品を渡したり、施設を無料で使用させたりすることは、現物給与とみなされ、給与課税の対象となります。
給与課税すべき事項について福利厚生費として会計処理を行うのは、税法上逸脱した行為であり、税務調査で指摘を受ける原因となります。正しい処理方法で従業員に還元を行うようにしましょう。
現在行っている賄い料理の提供が福利厚生費として処理することが妥当なのか、もしくはこれから賄い料理を福利厚生に導入したいがどのように会計処理は行うべきか、などご不明な点がございましたら、弊社にご相談を頂ければと思います。
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